用語解説

遠隔画像診断

遠隔画像診断
かつては画像診断は、撮影した施設内で、画像読影医や臨床医が、読影を行うのが当たり前でした。読影には、撮影した画像が読影医に送られること、画像にかかる臨床情報が読影医に送られること、読影後に読影結果を記載した報告書が読影依頼医に送られることが必要で、これらが速やかに、正確に行われる必要があります。以前は当然読影医と臨床医が同じ病院にいることが必要と考えられていましたが、インターネットの普及により、これらの画像や情報の移送はたいへん容易になりました。遠く離れた病院や検診施設と契約して読影のみを受託する事業が生まれました。これを「遠隔画像診断」といっています。
遠隔画像診断施設は全国で数十あるといわれますが、運営の形態はいろいろです。企業が出資運営し契約読影医が読影するもの、読影医のグループが出資運営も行うもの、企業が出資のみ行うものなどなど。
私どもの新潟画像診断センターは新潟大学放射線科とその同窓会の有志が、出資運営すべてを行っています。

似たような言葉として、「遠隔医療」という言葉もあり、遠隔画像診断をこの一部と位置づける考えもありますが。「遠隔医療」は、本来は対面で行う医療を、通信を通して行う、やや緊急避難的な意味合いで使われることが多い言葉です。

顔の見えない診断、顔の見える診断

顔の見えない診断、顔の見える診断
「顔の見えない診断」は遠隔画像診断の批判として使われるようになった言葉です。画像読影の業務においては、患者さんを診る医師は、患者さんについての臨床情報を文書の形で提出し、読影する医師は読影報告を文書で提示します。患者さんを診る医師からみて、同じ病院の常勤医が読影していれば、意思疎通に問題はありません(顔の見える診断というのは顔の見えない診断の反対概念として付随的にできた言葉ですが、この場合は「顔の見える診断」ということになりましょう)。しかし読影をしている医師が、名前も経歴も普段どこにいるのかも、何も知らないということはかなり困ることです。記載された内容が読んでわかりにくい、判断に迷うといったことは、まれならず起こります。わかりやすい、誤解の恐れのない記載をする努力は遠隔画像診断の場合、読影医に対しても依頼医に対しても強く求められます。普段から依頼側と読影側と、連携を取り合っていることも重要です。
私ども新潟画像診断センターでは、少しでも顔が見えやすいよう、クライアントの施設は、新潟県内または新潟大学の関連病院に限っています。

CT(X線CT)

CT(X線CT)
CTは、Computed Tomographyの略です。日本語ではコンピューター断層撮影と呼ばれます。CTはやや広い概念でもありますが、通常、CTといえばX線CTをさします。従来のX線撮影では1方向からX線を入射して、人体を透過した成分をフィルムで受けて(実際は増感紙というものを介しています)画像を作ります。CTは人体の前後左右360度からX線を入射して、透過成分を検出器で測定して人体の横断断面像を作ります。両者とも人体の各部のX線透過性の大小により画像を形成するわけで、この点ではCTも従来のX線検査の延長上にあるといえます。しかしX線透過性の大小をいかに判別するかという点では大差があります。たとえば従来のX線撮影では、肝臓などの中身の詰まった臓器と、水とを区別することができませんが、CTでは明瞭に区別できます。これは「濃度分解能が高い」というように表現されますが、CTの卓抜した特質であるといえます。
さらに造影剤という、X線透過性を低める薬剤を静脈投与することで濃度分解能の高い特質を増強させ、さらに血流の時間的推移も検討できるようになっています。
CTの画像は、直接的には横断断面像なのですが、これを重ねあわせて再構成してさまざまな断面、さらには立体像を表現できるようになっています。
使用するのはX線であるためX線被曝があり、通常は従来の撮影よりX線被曝が多く、この点問題があります。

MRI

MRI
MRIは、Magnetic Resonance Imagingの略です。日本語では磁気共鳴画像と呼ばれます。磁気共鳴現象については1940年代から知られていましたが最近になり画像化する技術が開発されました。
ややこしい話になりますが、原子番号が奇数の原子核は磁気を持ち磁石としての性格があります。現在MRI画像に使われるのは、ほとんど(原子番号1の)水素に限られるので水素の原子核について考えます。
水素はもちろん身体のいたるところに存在します。水素の原子核の磁気は普段は無秩序の方向を向いていますが、MRIのような強い磁場(磁気のある環境)に入ると、ある程度一定方向を向くようになります。
この状態にラジオ波という一種の電波をかけてやると、電波の周波数により原子の磁気にある励起状態が起こりますが、これを磁気共鳴現象といいます。この際に臓器・組織などによって励起状態から戻る時間に差が生じます。この差を電波として受信して、複雑な計算を経て画像を作ります。
画像は基本的に断面像ですが、CTとは異なり、横断面以外のどんな断層面でも直接作成することができます。
またCTでは放射線透過性のみがパラメータ(画像作成の要素)ですが、MRIでは、水素原子濃度、T1緩和時間、T2緩和時間、血流など多数のパラメータがあります。同じ断面でもT1強調画像、T2強調画像というように種々の画像ができ、見た目の違う画像になります。このようにいろいろな画像が得られるということは、画像の解釈が難しいということでもあり、画像検査としての可能性が大きいともいえます。
CTにおける造影剤に相当する、「MRI造影剤」を静脈注射しながら検査することも可能で、血流の時間的推移も検討できます。
使用するのは磁気と電波であり、X線は使われません。現在までのところ、磁気、電波とも人体に対して有害との証拠はありません。
しかし電流を誘導する可能性があるので、心臓ペースメーカーを装着された患者さんには禁忌とされています。

RI画像

RI画像
放射性同位元素(RI)を用いた医療を核医学と称し、これによる画像をRI画像とか核医学画像とか呼びます。一般的にはシンチグラムとも呼ばれます。
人体の特定の部位には、特定の物質が多く集まる(「集積」といいます。)事は広く知られています。よく知られた例として、甲状腺には、そこでつくられるホルモンの材料としてヨウ素が多く集まります。
そこで、たとえば放射性ヨウ素を投与するとそれが甲状腺に集まり、それを体外から計測することができます。計測により甲状腺の機能の評価をすることができ、放射線に感応するカメラを使えば甲状腺の形態を撮影することもできます。これによる画像が、RI画像、シンチグラムです。
甲状腺の場合は元素そのものが集積するのですが、特定の臓器、部位に集まる物質に放射性同位元素をくっつけてやる(「標識」する、といいます。)ことにより、いろいろな臓器、部位について撮影をすることができます。
細胞や組織の生理学的な機能により画像がつくられる点において独特のものであり、例えば、形態からは炎症か腫瘍かわからない病変を、明確に鑑別できることもあります。
人体に放射性同位元素を投与するわけですが、通常は健康に有害な被ばくを及ぼす量ではありません。